大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)2495号 判決

被告人 三菱商事株式会社

〔抄 録〕

また、所論は、外為法第二七条第一項第三号の規定は、非居住者のためにする居住者に対する支払により非居住者と居住者との間に外貨による債権債務の関係が発生することを前提とするものと解釈すべきところ、本件預り円の支払によつては新たに対外的な債権債務の関係を生ずることなく、被告会社が非居住者フイリツピン商社に対して負担する外貨債務を外貨で送金せず、日本国内において居住者古沢貿易を指示して同人にその支払を託したものである。したがつてこれによつて被告会社と非居住者フイリツピン商社との外貨債権が円貨債権に振り替り外貨との関係はこの時に消滅してしまうのである。したがつて爾後円貨債権としてそれが国内に転々しようと最早それは外為法の規整の埓外に置かれるものであると主張するのである。

しかしながら法第二七条第一項第三号が非居住者のためにする居住者に対する支払を禁止しているのは、非居住者のために居住者に対して支払をなすことが、非居住者に対し直接支払をなす場合と事実上同一の結果をもたらすからであつて、必ずしもその受領を受ける居住者と非居住者との間に外貨による債権債務関係が発生する場合に限らないのである。本件において被告会社より非居住者フイリツピン商社のための支払を受領した居住者たる吉沢貿易こと吉沢良保は、その一部を来日中の右非居住者に直接手交して支払い、またその一部は非居住者の指示によつてこれを他の居住者に支払い、非居住者に支払つた場合と事実上同一の結果をもたらしているのである、法律は非居住者に対する支払およびこれに同一視すべき非居住者のための居住者に対する支払を禁止しているのであつて、本件は正にその後者に違反したものであることは明瞭である。外貨債権が単に円貨債権に振り替つたものであるから、外為法の規整の埓外であるという所論は採用しない。

(兼平 斉藤 関谷)

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